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 英語の文章を読むのが苦手という方は多いかも知れません。でも、そういう方は、ちょっと立ち止まって、三つのことを自問してみて下さい。

 

 「そもそも、私は日本語を読むことは得意なのだろうか?」

 「英語の文章を読むための基礎はできているだろうか?」

 「私の興味・好奇心アンテナは働いているだろうか?」

 

 実は、これらの問いかけは非常に重要です。なぜなら、読解力というのは、母国語のリテラシー、単語や文法の基礎力、そして「知りたい!」という欲求と比例するからです。これは意外と見落とされているポイントなのですが、よく考えれば、しごく当然なことです。

 

 

1.日本語で読めない文章は、英語でも読めない = 日本語で読めるなら、英語でも必ず読める!

 

 例えば、英語を勉強している7歳の子供が、ある文章の中に "contradict" という単語を見つけました。意味がわからないので 辞書を調べると、「矛盾する」とあります。「矛盾?」読み方すらわかりませんので、コピペしてググります。すると、「孟子」「韓非子」「伝統的論理学」「命題」など、聞いたこともないような言葉が羅列されており、頭が「?」でいっぱいになり、父親に聞きます。

 

 返ってきたのは、「矛盾というのは、辻褄が合わないことだよ」という答えでした。

 

「つじつまって?」とさらに聞き返すと、父親もその意味まではわからなかったようで、言い換えました。

 

「つまり、言ってることとやってることが違うことだよ。お母さんはいつもダイエット中と言いながら甘いものを食べているだろう?やせるためには甘い者を食べないことが大事なのに、甘いものに目がないお母さんは、食べ続けてしまうんだ。こういうことを矛盾している、っていうんだよ。」

 

 この子がようやく「矛盾」の意味を理解するには、これだけの労力と作業が必要になります。そして、世の中の矛盾を多く感じたり、葛藤することを通じて実感としてこの言葉が理解できるようになるまでは、おそらくあと数年かかるでしょう。

 

 一方、大人はどうでしょう?中高生以上になれば、世の中の矛盾はたくさん見えてきますし、「矛盾してるよ」などという会話も日常の中で使っていることでしょうから、辞書を調べた時点で、「わかった!」となるのです。つまり、言語の学習というのは、母国語での言語体験の深さや語彙数の広さと深く関わりがあるため、多くの経験を積んでいる大人になればなるほど、飲み込みは早くなるのです。

 

 言葉の感性の鋭さは、ずばり、思考の量と深さに比例します。そして、これは母国語で達成される必要があります。なぜなら、母国語でこれまで蓄積してきた思考量と到達した深さ以上には、第二言語で届くことはほぼあり得ないからです。よく様々な言語が話せる、ということを自慢する人がいますが、誤解を恐れずに言うと、中途半端な言語感性のままで10の言語に手を出すよりも、母国語の言語感性を徹底的に磨いた方が間違いなく大きな武器になります。

 

 では、どうすれば言語感性を磨くことができるのでしょう?

 

A.なるべく多くの文章を読んで、言葉をインプットし、文章理解力を高める。

 

B.当たり前にただ情報を受け取るだけでなく、「本当にそうか?」「自分はどう考えるのか?」と頭の中で問いかけをし、「考え抜く」ことを習慣化する。

 

C.自分自身の考えを、「話す」「書く」などの手段を使ってアウトプットする。

 

 この三つの行動を習慣化することで、思考は格段に深まり、言語感性は磨かれます。そうして磨かれた母国語の言語感性を武器にして、新しい言語について吸収していくことが近道になるのです。ですので、英文読解が苦手、という方は、そもそも日本語を浴びるように読み、書き、話すことが不足している可能性がある、ということをまずは心に留めて下さい。

 

 

2.一定の言語知識のストックがなければ、読解は出来ない = 中学英語がわかるなら、大丈夫!

 

 当たり前のことですが、日本語が得意なら、いきなり英語が読めるわけではありません。英語と日本語はまったく異なる別の言語体系ですから、日本語から英語を勉強しようとしても無理があります。日本語で言語の感性を磨くのは、あくまで「思考を鍛える」という複数の言語をまたいで応用できる能力を磨くためであって、文法や単語などがそのまま当てはまるわけではありません。

 

 具体的にいえば、中学英語程度の英文法と単語のベースがあれば、まずは問題ないと言えるでしょう。その根拠は、そこが自分で文章を書くことができるために必要最低限なスキルとナレッジのレベルだからです。逆に、日本人はわりとストイックなので、英語を勉強にしてしまい、文法的な正しさを追求しようとしたり、知らない単語は全て調べて、記憶の中に単語を詰め込もうとする傾向にあります。これはやりすぎです。

 

 言語は生き物なので、知らない単語がなくなる、ということはまずあり得ません。日本語を考えたらわかると思いますが、古いいいまわしも含め、全ての言葉や表現を知っている人などいないですし、多くの方は別に歩く辞書になりたいわけではないでしょう。言葉の感性を高めてコミュニケーションの達人になることや、周囲をあっと驚かすような素晴らしいレポートが書けるようになること、あるいは個性的な小説を書く、といったことが目的なはずです。ですので、知らない言葉を見つけて、それがわからなければ前に進めない、という場合には、その都度調べればいいのです。

 

 

 つまり、中高で学校教育を受け、英語が嫌いでなかった人なら、間違いなくこのレベルは満たしている、といえるでしょう。

 

 

3.興味・好奇心のアンテナが発動しなければ頭に入らない = アンテナが立っていれば、なんとなくわかるもの!

 

 最後になりますが、この点が一番大事だったりします。

 

 たまに、ぜんぜん英語が話せないのに、問題なく外国人とコミュニケーション出来る人っていますよね?これは、相手の気持ちや言いたいことを知ろう、とする興味・好奇心が強いからなのです。

 

 逆に、英文読解のために参考書などでまったく興味のない文章を読んでいる人をよく見かけますが、こういうやり方は下手をすると、好奇心のアンテナを折ってしまいます。「これについて知りたい!」という欲求があってこそ、情報の中身が頭に流れ込んでくるのです。

 

 「じゃあ、参考書はやらないほうがいいの?」となりますよね?基本的には、参考書よりも自分が興味のある内容の文章を英語で読んだり、聞いたりするほうが上達は早いですが、人生には興味のないことでも情報として入手する必要がある場面は多々ありますよね?そういう訓練も兼ねて、参考書に書かれていることに対し、あえて積極的に「知ろう!」とすることをお薦めします。例えば、単語の意味をひたすら調べて意味を書き込むのではなく、そもそも書かれている内容についてGoogleで調べてみたり、内容に対する自分の考えをあえて書き出してみたり、その学び自体を楽しい活動に変えてしまえばいいのです。「好きなことをやる」ではなく、「やっていることを好きになる」ということですね!

 

 

 まず、英語を勉強したいなら、母国語である日本語で文章を読み書きすることに強くなること。自分の考えていることを知っている単語を並べて文章に出来る程度の英語リテラシー、つまり中学英語程度の英語力を身に着けておくこと。そして、読解を「勉強」ととらえて単語を詰め込もうとしたり、短時間でポイントを抑える、といった細かいスキルの習得にフォーカスするよりも、文章を読むことを「苦行」から「楽しい遊び」に変えた方が、本質的な読解力は圧倒的に向上します。

 

 SoC David's では、ふだんセッションで話しているような内容や、オーガナイザーのDavidがふだん感じたり、考えていることをブログ的な感覚で友人にも問いかける、というタッチでやっていますので、ぜひこの機会に、英文読解を勉強からコミュニケーションや遊びに変えて頂ければと思います。